鹿のフン、発見!
父が危篤状態なのに、川上に来てしまった。台風の影響で雨も激しく、降りやんでも、霧があたりに白くたち込めている。
父は映画が好きな人だ。思い出は映画館。「小鹿物語」を見たときに私は泣いた。あの時の主人公の父親役と、私の父はなんだかオーバーラップする。
アメリカ開拓時代の映画だ。森の中に畑を作るが、母ジカが来て、作物を食べられてしまう、父親は、シカを銃で撃ってしまう。残された小鹿を男の子が育てるが、その小鹿も時がたつと畑の作物を食べてしまう。そのあたりまで覚えているが、その先がどうも、定かな記憶がない。映画の内容を確かめようと、この間、近所のTSUTAYAで検索してもらったが、そのビデオは置いてはないということだった。
敷地の畑の周囲に網を張ってあるが、その網に沿って、フンがしてあった。ウサギのフンはその辺りにころがってあったことがあるが、シカのは初めて見る。月見草やアカマンマの葉が噛み食べられていた。ちょっと嫌がらせをしているみたい。雑草に紛れてまいておいた、春菊はフタバで残っていた。
私は小鹿物語を見て、映画館で泣いた様に、白樺に囲まれた森の中で、わんわん泣いた。あの映画こそが今の田園生活を夢見るもとになっているのだから。
しばらくして、奥の森の方から、悲しそうなシカの鳴く声がした。
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