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2005/11/26

父の死・Ⅱ

私が音楽を好きになったのは、父の影響だったと思う。戦後の6畳一間の部屋で、父と母はよく音楽をながして、ダンスを踊った。たぶんラジオから流れてくる曲に合わせて、急に踊りだしたのだと思う。私は、ロマンチックになりながら父と母を見上げていた。母を抱いて踊っている父を素敵だと思い、抱きしめられて踊っている母をきれいだと思っていた。そんな時弟は父と母の間に割り込んで入っていき、母の足の上にのって自分が踊っていた。私はせっかくいい気分になっていたのを、少しがっかりしながら、弟を見ていた。

父はタンゴが好きだった。ラ・クンパルシータ、碧空、真珠とりのタンゴ、たぶんダンスは他の洋楽を聴いて踊ったのだと思う。タンゴは好きだったけれど、踊れないと思う。その思い出の一場面は弟が幼稚園ぐらいの時のこと。遠い遠い昔のことだ。

父には入院中に病室にテープを持っていきタンゴの音楽を流した。息が苦しそうで少し流して終わりにした。そのテープをもう1度流したのは、通夜の日、家を出る少し前の葬儀社の方が来る前に流した。それは母が指示してくれた。北枕のそばでタンゴはながれた。

あの日のダンスの場面は目に焼きついて忘れられない。今、私は父と母の子に生まれたからこそ、幸せなのだと思う。

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