酔余の日記
一カ月ぶりに川上に行った。やらなければならないことがたくさんあった。そのほとんどがやりたいことだった。野辺山のびっくり市で百目柿を購入。15,20,24個計59個を剥いて、紐で吊るす。そのうちの15個にT字型の木の枝が付いていなかった。ただのI字型の枝では紐が結べない。これは干し柿のお約束のはずだ。そう、だから少し安かったのですね?私は信じているから、ひっくり返したりしませんよ。うそつきね! これも脳の体操と考え直し、針金と金網で工夫をして2階の窓辺に干す。柿のカーテン。
畑の周りのススキを刈る。夏に切った木の枝の上にガシガシと乗り、ビシバシと枝を折る。台風で落とされた木の枝を拾い白樺の根方に置く。木のチップスは足裏に心地よい。その上に降り積もった白樺の葉を竹箒でパパパと散り払う。外の通りに落ちている白樺の葉をU字溝に掃き落とし、ビニール袋に詰めて畑まで持っていき、大根の畝の周りに置く。これを8回往復する。裏の家の周りの葉も箒で掃く。ベランダの下に生えている木や草を鎌で刈り、熊手で掻き集める。
ベランダの横の樅の木が八ヶ岳の頂上を遮り始めたので切る。鋸で木の屑が鼻やのどに入りそうになるのをふーと言いながら鋸を引く。花壇と決めてある場所に鹿が来て、また菊の花を摘むように食べていっている。来年は私が好きなヤマユリをまた再び植えたい。この冬は我が家もフェンスを巡らす。その棒や網を見積もるため、鹿目線になって家の周りを考え考え歩き回る。そうしている時も鹿は近く遠く、ヒューンヒューンと鳴いている。「来てもいいけど、負けないからね!」
私は母のことを考えていた。最良ではない方法をとらざるを得ないこのやるせない気持ちを持ちながら、なぜ、いつも、反対のことを言ってしまうのか。自分の言った言葉がこの土地の向こうにある尾根にやまびこになって私に還ってくる。家に戻ったら来週は母の身の回りを片づけ、ヤドカリのように次の老健への移動だ。皮膚科にも連れて行く。もう一度、聖書のどこかを開けようか? それともまた、深沢七郎の楢山節考を読みなおそうか。
梯子に登って梅の木を切る。黄葉した葉がはらはらと落ちる。桜切るバカ、梅切らぬバカ。今年は花が咲いたのに蜂が受粉をしてくれなかったのか、実は少しだった。
畑の周りのミントは歩くたびに匂いがする。パイナップルミントの甘いにおいとペパーミントのさわやかな匂い。鹿はついにミントもオレガノも、験の証拠も食べつくすつもりだ。花がしごくように食われている。その下にはコロコロの鹿のフンが撒かれている。
2009年10月26日の畑の収穫はルッコラ と赤カブと細い大根、大根以外を鎌で切り取ってバケツに入れ外の水道で雨に濡れながら、洗う。そして家に戻りゴミの分別。あー、なんと!生きていくのは大変。
これらのすべての作業に3日半を擁した。
それでも移りゆく今年の秋を愛でて、訪ね来る鳥たちと言葉を交わした幸せな時間。それは勝ちとった時間かもしれない。
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