リンゴの断面のデザイン
子どもたちにリンゴの断面を描かす。デザインの初歩的なやり方を子どもたちに教える。もう2、30年前からしている方法だが、今回も子供たちは、そのやり方に感動していた。それはカーボン紙とトレッシングペーパーを使う、パソコンで印刷やレイアウトもできる今となっては原始的な方法だ。だが同じ形を書いたあとで、ずらしたり、動きや方向性を出せるので、小学生が自分の力で作り上げていくことができる。
左はヒナタ。彼女は色彩の塗る順序を決めて描いていた。サッカーも好き、絵も好きな子だ。
バランスも色彩感覚もいいと私は感じている。
隣のナミの描ききれないところを手伝ったら「ウーン」大きな目を鋭くこちらに向けた。そうだよね、妹や弟って妙に可愛がられてるんだよね。ごめんごめん。今度はチョっとヒナタのを手伝おうか?そんなことを言ううちに良い絵がかけました。
右はカノン。やはりサッカーと勉強が好きな子だ。描き終わってからよく見たら、テントウムシのようになった。西洋ナシがギターのようになっていて、動きを感じる。この二人は絵以外の生活が、作品に反映されている。情操教育はこうして1つのことだけでなく、2つや3つの要素が重なって出てくるのだと思う。
左はケンタロウ。形を詳細に積み上げてみた。カーボンを動かさないで描くのは結構集中して取りかからないと難しいが、それなりに描き上げて行った。
学校での図工で、彼が描いた絵を以前通っていたハナカちゃんと合作で描いた絵が選ばれ下敷きに作られたという。
何か、私の提唱した二人絵にも通ずるものがあるようで、学校もがんばっているのですね。
右はマナミちゃん、子供たちはこうした絵の場合に装飾的になる。それをできるだけ抑えて描かした。一つの青リンゴをあそこで止めたが、あの感覚はわからないのだろう。私も、それを子どもにうまく伝えられない。
この作品を選んだ私の感覚が絶対というわけではないから、これから先のデザイン感覚の芽を摘んではいけないと思う。今言えるのは子ども自身が信じて選び、考えているところまでやりつくしていることが大切だ。だから、中途半端だと、もう少し、もう少しと言って叱咤激励するだけだ。児童美術教育のチーゼックも教室でそうしたように。
左はモモコ。洋ナシとリンゴを美しい感覚で置いた。赤を効果的にも使っている。
この日は機嫌が良い日だった。子どもたちもいろいろな日もある。私だって、聖人君子ではないから、いろいろな日がある。
子どもが絵を描きながら、泣き出すこともある。それを何かと言い当てながら、泣いている子をぷっと噴出させることもある。それを言いながら、自分の小さいときの心を呼び起こしてしまうこともある。帰りの車の中で考えることもある。そういう日には音楽だけが流れる局を探すこともある。そして、思い当たることを考えたときに、「あの隣に座っていたアヤノちゃんはなんて優しいんだろうと思う。」にっこり笑いながら綺麗なハンカチを渡していた。私は工作用に持って行っていた、キッチンペーパーを出して子どもたちを笑わしたっけ。ねーモモちゃん、こういう日はいつかきらきらと輝くんだよ!
左はリサ。レイアウトの仕方も塗り方も筆圧も強い。声も大きい。元気いっぱい。結局その性格が絵に出ている。今回の予測通りではあった。
今回の作品では、子供たちに流行っているシールの世界が反映しているようで、デコラティブな表現が多かった。ここに取り上げたのはそうではないほうの作品と言える。
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