怖い絵(中野京子)と茨木のり子の永遠の詩
年が明けた途端に気持ちが春めく。平和な新年が約束されているように横浜港にはふわりと雲が浮いていた。
この正月は世界中が寒さに震えているようだ。ドイツも雪模様だ。私たちはまた寒い八ヶ岳に来ている。我が家の寒暖計は留守にしていた年末から2日にかけて-11.5度を記録していた。来る途中のレタス畑の電信柱にはトビがいた。自分のテリトリーを守るようにすっくとしていた。ネズミなんかが出てくるのを待っているんでしょうか。寒い中御苦労さんです。
欠け始めた月が今朝、白樺の間から垣間見られた。昨日の夕方、同じ方向の空に夕焼け雲が筆でなぞるように出た。妙に枕草子を思い出す。「春は曙、ようよう白くなりゆく山際、紫だちたる雲の細くたなびきたる」「夏は夜、月の頃はさらなり」「冬は努めて、・・・炭火の火も白き灰になりてわろし」この中の四季をすべて混ぜてシャッフルするとこの写真と私の気持ちになるようだ。
私は冬休みなので年末から読書を楽しんだが、「怖い絵」(中野京子)朝日出版と「茨木のり子 永遠の詩」小学館を読んだ。どちらも本好きの私にはたまらない内容だった。怖い絵は初版と次の3巻を読み、2巻は本屋になかったのでまだ読めていない。これからインターネットで買うつもりだ。
「怖い絵」の中野京子氏は早稲田大学のドイツ文学、西洋文化史の講師で、絵画の見方を面白く説明している。また歴史の裏事情についても、詳しい説明があり、一つの絵画を深く楽しむことができる。その中の一番おどろおどろしい、ルーベンスの≪メドゥ―サの首≫は周りに蛇やサソリやトカゲが描かれていて、いくら虫好きの私でも、ジッと見ていると寒気がしてくる。ルーベンスはその虫を弟子たちに特別にお金を支払って描かせたという。
また話は違うが、その絵が置かれている場所がウイーンの美術史美術館で正月三が日にニューイヤーコンサートのバレエの舞台となった場所のようだ。ベラスケスの≪フェリペ・プロスぺロ王子≫などもその美術館にあり、バレエの場面での壁面の絵画をもっと真剣に見ていてばよかったと後で思った。あのような綺麗なピンクの衣装を着たバレリーナの後ろにメドウ―サの首が見えるのはおどろおどろしいを超えてまがまがしいになってしまうけれども。
そして茨木のり子は昔、子供の中学受験の国語の問題を見ていた時に出てきて、その詩の良さを感じていたが、今まで詩集として読んではいなかった。≪夢≫と≪歳月≫が詩として心地良かった。私も年を重ねた時、そのような言葉を発することができればと少し思った。たくさん紹介すると著作権に関わるといけないので、このぐらいにするが、エゴンシ―レ、ミケランジェロ、ダ・ビンチの私生活についても言及していて、歴史の授業を聴いているような感じがしてくる。少しだけゴシップめいているが、民族の日常の積み重ねが歴史なのだからね。絵画を通しての歴史的好奇心を十分満足できたと言える。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 私の自分時間(2024.02.17)
- 思い出の絵本 その5「きつねの窓」(2023.11.20)
- 千早茜「しろがねの葉」を読んでからの「男ともだち」(2023.05.07)
- 読書の日々 (2021.02.01)
- 2021年 謹賀新年(2020.12.31)
「田園の誘惑」カテゴリの記事
- ロータリークラブの卓話にご招待(2021.11.27)
- ≪田園の誘惑≫更新しています(2013.05.06)
- 婿殿の自動車教習(2013.01.27)
- 今年始めて山小屋に(2013.01.24)
- 11月22日はどのように過ごされましたか?(2012.11.26)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント