2015年12月の記事
2015/12/31
2015/12/14
篠原勝之「骨風」を読んで
私は自叙伝のような書物はあまり読みたいとは思ったことがなかった。
知り合いの人からその人の自叙伝をもらって読むこともあったが、その人と同じ体験を積んでも、私は私だからと拒絶反応が出て、読み切ることは無理だろうと考えてしまう。今回篠原勝之の「骨風」も初めからそのように感じていたので読む気には為らなかった。
私はツイッターで篠原勝之さんをフォローしていたので、そこからフェイスブックにつながって、毎日彼の仕事や呟きを覗くともなく見ていた。初めはとても安穏な雰囲気が漂っていた。ところが「骨風」の原稿を書き上げて印刷物になり、多方面から彼に応援が来るうち、何かだんだん力が満ちてくるのをフェイスブックの≪近況≫の中に感じてきた。そして泉鏡花賞を取るに至ると俳句を頻繁に載せるようになり、その句に鋭さが溢れてきた。過去にはいっぱい俳句を載せていたのかもしれないが私は知らない。大変失礼な言い方を承知で言うが、どうしてこんなに上手なのだろう。
そして泉鏡花賞を取った時の受賞の挨拶の原稿(http://yaplog.jp/kuma-midokoro/archive/4141)がフェイスブックに載り私は心を打たれた。よし、読もう。
そこで私は彼の行動圏にあるはずの長坂の本屋でその本を買いたいと思い、行ってみた。だがそこには売っていなかった。でもそれにこだわってアマゾンで頼めばすぐに手に入る「骨風」をその本屋から取り寄せてもらった。「ここには篠原勝之の新刊本、骨風はないのですか、ここから多分10分足らずの甲斐駒ケ岳山麓に住んでいる地域のゲージツ家ですよ!」と言いたかった。私の感性としてそれは言えなかったが。
そのようにして読んだ「骨風」はフーガのような構成になっていた。彼の現在と過去が同じカテゴリーの中で出てくるのでクラシックの音楽を聴いているようなリズムを感じてくる。きっと人生が追いかけたり追いついたりの流れの中にあるのだと思う。このように自叙伝を毛嫌いする私も感動した「骨風」を読むことをお勧めします。骨という字から、武骨でもあるのだと思う。しかし心は清く澄んでいると思う。そして読んだ後に富士山を見るとまたいつもの富士山とは違う暖かい富士山を感じてくる。骨風を読むとそれは分かる。在りきたりな概念論でなく心のこもった篠原勝之の言葉で書いているからだと思う。それが心を打つのだと思う。内容については書かないがこれが同じ甲州と信州の地続きの山暮らしのゲージツ家へのお祝いのメッセージ兼感想文にしたいと思います。泉鏡花賞受賞おめでとうございます!
2015/12/13
横須賀美術館<浮世絵にみるモダン横須賀&神奈川>
いつも計画を立てないで行き当たりばったりの小さな旅は私たち夫婦に喜びをもたらす。今回は横須賀美術館に悪天候の中行ってみた。激しい横風が吹く中ではあったが横横道路も空いていて、快適なドライブだった。
目的は今開催されている「浮世絵にみるモダン横須賀&神奈川」を見に行くためだ。地下二階の駐車場から地上1階の展覧会場は海が見える丘の部分に建っていて現代建築という雰囲気が漂っている。芝が植わった丘が、目の前に広がるので裸足で歩きたい衝動に駆られる。それは今関係ない。
始めの部屋は江戸時代の東海道を描いたものが多く、表記の中に富士と不二があった。大山詣での男たちが滝に打たれているのは歌麿と北斎では表現が違っていた。北斎の方がたくましい。歌川国芳の「七里ガ浜より江のしまの遠景はの中の男の子たちの裸で戯れている様子はのびのびして見ていて楽しくなる。人が描かれていて細かいのも時代を読み取れるが、シンプルな山や木、雨などの描かれ方を見るとデザインに生かせそうに感じた。東海道五十三次はよく目にするが、改めてよく見てみると藍色が良い発色をしていた。いわゆるジーパンの藍につながる。
東海道五十三次細見図絵の人々の顔に鼻を描かないのがあり、漫画的で面白かった。文明開化の異人たちは国別に表現されて見飽きない。落ち着いて見たい作品が多く時間が足りないほどだった。西洋の油絵や日本画の大作と違い、グッとそばに近づいて細かく作品を観察するといろいろ分かって面白い。蒸気機関車の開業は1872年なのだがその前に浮世絵師が調べて先に絵にしたと説明にあった。初めに描かれているものほどおもちゃのような描き方は本当におもちゃの汽車を見て描いたような気がする。今も昔も人々の好奇心を満足させるために、写真の前身ともいえる浮世絵師はパパラッチしていたのかもしれない。ビックラポンだわ!
木版画の製作工程が最後に展示されていて、なんと細かい作業なのかとため息が出た。
見終わってから、ミュージアムショップでこの展覧会の図録を購入した。時間のある時にこの作品のモデルたちを見つめて江戸や明治に思いを馳せると、時空を超えられるかもしれない。
また、面白い企画があったら訪問したいと思った。ご招待下さったYさん楽しい時間をありがとう!
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