名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN
「名もなき者」では「アメリカの若者ボブ・ディラン」は1950年後半アメリカを旅をして、詩を書き、曲を作り、ギターを弾き、ウッデイーガースリーを尊敬し師と仰いでいた。デイランは病に侵されているウッデイガースリーを見舞う。そしてピートシーガーに出会う。そこから映画は始まった。
60年前、我が家にはボブディランの曲が多分レコードから流れていた。もしかするとカセットからの音源かもしれないが。弟が高校1年でギターを弾き「風に吹かれて」を歌い。そしてケネディの演説を声を出して暗唱していた。あの頃がボブデイランの歌を通して蘇る。
私がよく歌っていたのは「朝日のあたる家」だったと思う。あまり意味を介せず歌っていたように思う。ボブ・ディランよりはバエズの方を聞いて歌っていた記憶がある。「風に吹かれて」「Don’t think twice it’s all right 」「時代は変わる」「ミスタータンブリンマン」「Tom thums Blues」など聞き覚えて歌っていた。今では申し訳ないが鼻歌ほどだ。
弟は有栖川記念公園の近くの高校だったから大使館も多く赤ちゃん連れの西洋人と友達になり英会話力を高めていった。私は美術系の受験だったので英語は筆記試験をこなせるようにという程度だったのだろう。とにかく団塊の世代だったから。
あれから70年は経ったが私たちは日々、普通の日常を過ごしている。時々ボブデイラン旋風が吹く。来日していると聞くと胸が騒ぐ。ノーベル平和賞を取った、友人恋人であるバエズが来日すると聞くとまた旋風が吹く。30年は前だがバエズが来日した時は神奈川県民ホールに子供たちと聴きに行った。その日の次女の日記には「ジョーンバエズの音楽会…私はバエズさんが歌っているのを見ていたらどうしてか涙が浮かんできました。私はお母さんが言っていた戦争反対ということを歌にしたらぴったりです。私は英語もわからないのにそれが頭にうかんできました。ジョーンバエズの声はものすごくたかいきれいな声でした。」
その日のことは娘たち2人の忘れられない記憶になり、今回のボブ・デイランの映画も見に行きたいと言っています。
「名もなき者」は私の青春時代の1ページを紐解くようです。映画では政治的な発言も場面もあったがそれより詩的な表現がボブディランを取り巻く人たちから聞くことができた。ピートシーガー、彼の妻トシ、ボブデイランの最初のパートナー、シルビールッソ、バエズも、彼の周りに居た演奏家たちは日常的に詩的表現をしていたと感じた。彼らはそのように日々を大切に生きていたのかもと思う。デイランの作品のデイスコグラフィー目録の素晴らしさもあるが彼を取り巻く人々は彼を守り、本質の優しさ(kindness)が感じられた。それはデイランの繊細な神経を気遣う注意深さからなのかもしれない。
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