2025/09/19

映画「イル・ポスティーノ」を見て

イル・ポスティーノ

チリの政治家であり、詩人のパブロ・ネルーダは亡命してイタリア、ナポリ湾の島に移り住む。たくさんのファンレターが届き、島の若者マリオがその郵便物を配達をすることになる。ネルーダは妻を愛し時にはタンゴを2人して踊っている。その様子を垣間見ながらマリオは詩が書けたらいいなと思い始める。詩が書けたら女性に愛してもらえる。郵便を配達しながらマリオはどうすれば詩人になれるかネルーダに聞いた。

「入江に向かいゆっくり岸を歩きなさい。この島の辺りは海そのもので絶えず溢れ出る。いいと言い、いやと言い、いいと言い、またいやと言う。青い波と泡の動きの中でいやだと繰り返し静かにしていない。私は海と言いながら岩にすがる。でも岩を口説けない。」

海辺でネルーダはジョルジョに伝える。

「7匹の緑の虎、7匹の緑の犬、7匹の緑の海で、岩を撫でくちづけをしぬらす。我が胸を打ち、名を繰り返す」ジョルジュはネルーダに言う。「変だ。変な気分になった。言葉が打ち寄せて海のようになった。」

ネルーダ「それがリズムだ。」

ジョルジュ「船酔いになった。なぜか説明できない。でも感じた。まるで言葉の真っ只中で揺れる小舟だ。」

ジョルジュ「この世界の海や空や雨や雲や世界全体が何かの隠喩になっているのですか」

 

ジョルジュは酒場で働くベアトリーチェを見初め恋に気づく。

「君のほほえみは羽を広げた蝶だ。君の笑いはまるでバラだ。鋭い槍溢れ出る水。」

そして次から次に熱い詩を贈る。

ネルーダはジョルジュを詩人として認める。

ジョルジュの詩をベアトリーチェが受けてネルーダが介添人となり教会で結婚式をする。

その日にネルーダの亡命が解除されてチリに帰ることが決まる。

 

そして5年の月日が経ちネルーダが島に再びやってくると男の子がいる。ジョルジュはいない。

この物語の中心の言葉は「隠喩」でもある。亡命してきた詩人と郵便配達人との友情。

ジョルジュ役のマッシモ・トロイージはこの撮影終了12時間後に心臓病で41歳の若さで夭折したと言う。ネルーダ役はニューシネマパラダイスのヒィリップノワレ。

 

詩ができるまでの精神の高まりが隠喩で表現されるのが勉強になった。ジョルジュは彼女への愛を詩にしたがその愛の気持ちを永遠に持ち続けることは日常にあっては難しいと思う。私も若い頃は詩も書いたが、最近では日常が白い波も青い海も遠くに押しやり、詩情を感じにくくなった。歳をとったからかもしれない。別離が目前に現れたら詩が思い浮かぶかと思うがそれも無理だ。詩は愛が押し寄せる時でないと浮かばない気がする。

イルポステイーノ!いい映画でした。

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2025/08/24

「法医学者マダムエール」に「アストリッドとラファエル」

Amazonプライムで「法医学者マダムエール」14話<目には目を>を見ていたら、「アストリッドとラファエル」が登場して来たのでビックリ!

同じ🇫🇷フランステレビドラマなのでこの回だけのクロスオーバーにしたようだ。金庫の開錠に眼球を使うという設定にも驚き、お料理をしようとして玉ねぎの瓶詰めに👀が入っているのを見たおばさまが卒倒!


<アストリッドとラファエル>

パリの犯罪資料局で働いているアストリッドは自閉症ではあるが警官だった父親の影響を受けて犯罪捜査の知識を並外れて持っている。アストラッドの論理的で几帳面な謎解き型捜査方法に対して思いつきと猛進する捜査方法でおおらかな警視正ラファエルはベストなコンビだ。

<法医学者マダムエール>

フランスのボルドー法医学研究所に勤めるアレクサンドラ・エールは、“遺体は真実を語る”がキャッチフレーズの、有能で変わり者の法医学者。真相究明のためなら解剖室の外に飛び出し、身分を偽って事件関係者に聞き込みをしたり事件現場に潜り込んだりして、兄である刑事のアントワーヌを困らせている。


この「目には目を」の特別コラボはこの回だけのようだが2倍の面白さがあった。

また2つのドラマはフランスの地を感じさせる撮影が楽しい。そして特にマダムエールのスタイリッシュでカラフルなファッションは参考になりました。

<アストラッドとラファエル>はもう終了しているのが残念ですが、ラファエルが最後に殉職しているのでもう復活しないでしょうね。この<法医学者マダムエール>で再び会えて嬉しかった。

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2025/08/05

「ブラジルの赤」感想

ルネッサンスの時代16世紀半ば、フランスの植民地をブラジルに作ろうとマルタ騎士団のヴィルガニヨン提督が立ち上がった。イタリア始めヨーロッパで戦ってきた歴戦の強者は配下の騎士や教会関係、行政官、商人、水夫などをその旅のために集めていた。その中にヴィルガニヨンの同志だったクラモルガン騎士の子ジュスト(兄)とコロンブ(妹)が居た。彼らは新天地での通訳として仕事が用意されていた。数ヶ月の大西洋の航海では集まった同志の探り合いや争いがあり食料もなくなり悲惨であったが、フランス王のための植民地を築くことと新教徒のために新しい土地を開拓することの大いなる希望で新天地に着いた。今のブラジル、リオデジャネイロなのだ。海岸の向こうは果てしないジャングルで、食人のインデアンとの戦いでもあった。航海の仲間はそれぞれの出自があって簡単には仲間と言えなかった。

クラモルガン家の2人の子供は2人とも男子として乗船し、ブラジルに着いてからもそのままの処遇だつた。2人はそれぞれ違った道を進み始めた。本国から送られてきたプロテスタントカルビン派に兄は影響され、妹はジャングルのインデアンの自然な暮らしにのめり込んでいく。時間が経つにつれて悪と正義とが見えてくる。2人はクラモルガン家のアイデンティティを芯に困難を乗り越えていく。


夏の暑さを忘れるほどに私も脳内で冒険をした。それにしてもページ数と、登場人物とキリスト教と時代背景を調べつつ読み進めた。章ごとにあらすじと登場人物をメモして進んだので、時々わからなくなると見返した。

この本との出会いはAmazonプライムで見た映画「再会の夏」を検索し、「ブラジルの赤」の小説を知ったのだがたまたま価格が300円送料200円だったので買いやすかった。(o^^o)

23年前の早川書房初版、仏ゴングール賞受賞だが本の状態は極めて良好だつた。

夏休みの後半に同じように胸躍る小説は出てくるか? 10日余の適度な脳の疲労感は熟睡を誘った。作者ジャン=クリストフ・リュファンへの憧れが夢となって現れますように! ジャングルの植物の葉が重なり合い鬱蒼としている中に女性として艶やかな肌のコロンブが自由を手にして生きていく、これは読み手の想像に任された世界でもある。


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2025/06/29

映画「クジラ島の少女」を観て 原題The Whale Rider

ニュージーランドの小さな浜辺の村ではクジラに乗って現れた勇者伝説が受け継がれ、ホエールライダーと呼ばれていた。クジラ乗りの後継者は代々族長家系の男とされていた。しかし族長コロの息子ポロランギが双子の男女を授かったにも関わらず出産時に妻と世継ぎになる男の子は亡くなり女児のみが残された。勇者と同じバイケアと名付けられ明るく育つ。しきたりを重んじるコロは村の12才になる少年を集め後継者になり得る者たちへ武道や精神を伝授させていく。バイケアはコロに隠れてそれを学習していく。村の学校ではバイケアの作文が表彰され、ホエールライダーの後継者としての覚悟を宣言している。

そのような時にクジラが浜辺に多数打ち上げられた。村人総出で助けようとするが、バイケアの助力もコロは拒む。もう彼女にはその力が備わっているのに!

ここからは映画を観てバイケアの願い、その涙を受け止めてあげたい。


バイケア役のケイシヤ・キャッスル=ヒューズはアカデミー主演女優賞に最年少でノミネートされ数多くの映画祭で観客賞を受賞している。2003年の作品で原作はウィテイ・イヒマエラ。監督はニキ・カーロ

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2025/06/01

メグレ警視の妻へのラブレター

Amazonプライムのローワン・アトキンス演じるメグレ警視はフランスが舞台のイギリスのテレビドラマで4話しか作られていない。今まで見ていた刑事ものは銃による撃ち合いが多かったがメグレ警視はそれらが少なく、バリの街が出てくるので期待してデジャブ感がある。

特に妻との会話が何気なく素敵だ。Mr.ビーンのコメディアンの印象とは全く違う。彼の履歴を読むとこの頃は人生の転換期だったようでそれがメグレ警視の深みを出しているのかと頷ける。ストーリーの中では

「私の手紙本当に全て燃やしたのか?」

「怒らせたからよ」というシーンがある。

そして事件が解決しメグレが食卓のテーブルの上の大切な箱に目を止める。これは?………

「私の手紙だ」

「さすがに燃やさないわよ」

「これより特別なものは思いつかない」


私も夫からの手紙はとってある。今日が記念の日ではありますが、どうしようかと迷ってます。さすがに燃やさないわよ❤️

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2025/04/27

獣医ヤコブス

ドイツの片田舎シュバニッツでの事件簿だ。人間嫌いで、獣医、元警察官のヤコブスがこのシュパニッツ村にクルーザーを停留させた。殺人事件が起き、動物病院の院長が亡くなったのでヤコブスが継ぐことになり、女性警察官のローナ、その友人のユーレ、彼の愛犬ボリーが村人に起きる不可解な殺人事件を解決していく。事件の解決方法が少し素人っぽいのは村という最小組織のせいらしいがインターネットの使い方が見る方にもわかるように解説してくれる。

シュパニッツ村をGoogleマップで調べたが解らない。トラベミュンデやリューベック、ハンブルグ警察、ノルデイックレースなどの言葉が出てくるからドイツ北部の村であるに違いない。我が家のドイツ全図も虫眼鏡で見たが判らない。

ヤコブス、ローナ、ユーレを中心に動物(犬、馬、鳥、)への温かい眼差し、人間同士の愛、嫉妬、心遣いが優しく見える。またローナの父親が過去に何らかの秘密があるのも気になる。6話で終わっているがまだその事の真相は判らないから、多分「To be continued 」なのでしょう。

私は2000年を相前後して10回は夫とドイツを旅行している。ドイツ語はグーテンターク、グーテンモルゲン、チュースぐらいしかできなかったけれど列車での旅だったからリアルな思い出がある。この映画「獣医ヤコブス」はサスペンス映画だが,映像の中の菜の花畑はバイオガソリンを作っているのであるし、麦畑の中でピクニックをしてたのはビールやパンの材料大麦、小麦がドイツらしい。

この手のサスペンスものはイギリステイストが多いがドイツものは初めて見た。ちょっと違う。私にはハンブルグ、ミュンヘン、オーバーアマガウ、ツエレ、ゲンゲンバッハ、メーアスブルグなどの都市の家々のドイツの空気みたいなものが感じられて楽しい映画でした。

シーズン1の6話で終わっているがシーズン2が待ち望みます。

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2025/03/06

映画「グランドジャーニー」を観る

グランドジャーニー

南仏の田舎町カマルグで雁の研究をしている鳥類研究家で気象学者のクリスチャンと、ネット好きの息子トマ。父親は絶滅が危惧される渡り鳥に安全な飛行ルートを教えるという無謀な計画を息子トマに話す。まずはマントを着て鳥たちが殻から出て初めて見る人を父親と思って付いてくるように刷り込みをさせるところから始まる。パラグライダーに似た超軽量飛行機の操縦も教える。フランスからラップランドまでの飛行と帰りの飛行で雁たちは渡りを覚えられるのだろうか。

見終わって調べると映像はCGは使わず撮影し、実話に基づくという2020年の作品。

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2025/03/01

名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN


「名もなき者」では「アメリカの若者ボブ・ディラン」は
1950年後半アメリカを旅をして、詩を書き、曲を作り、ギターを弾き、ウッデイーガースリーを尊敬し師と仰いでいた。デイランは病に侵されているウッデイガースリーを見舞う。そしてピートシーガーに出会う。そこから映画は始まった。

60年前、我が家にはボブディランの曲が多分レコードから流れていた。もしかするとカセットからの音源かもしれないが。弟が高校1年でギターを弾き「風に吹かれて」を歌い。そしてケネディの演説を声を出して暗唱していた。あの頃がボブデイランの歌を通して蘇る。

私がよく歌っていたのは「朝日のあたる家」だったと思う。あまり意味を介せず歌っていたように思う。ボブ・ディランよりはバエズの方を聞いて歌っていた記憶がある。「風に吹かれて」「Don’t think twice it’s all right 」「時代は変わる」「ミスタータンブリンマン」「Tom thums Blues」など聞き覚えて歌っていた。今では申し訳ないが鼻歌ほどだ。

弟は有栖川記念公園の近くの高校だったから大使館も多く赤ちゃん連れの西洋人と友達になり英会話力を高めていった。私は美術系の受験だったので英語は筆記試験をこなせるようにという程度だったのだろう。とにかく団塊の世代だったから。

あれから70年は経ったが私たちは日々、普通の日常を過ごしている。時々ボブデイラン旋風が吹く。来日していると聞くと胸が騒ぐ。ノーベル平和賞を取った、友人恋人であるバエズが来日すると聞くとまた旋風が吹く。30年は前だがバエズが来日した時は神奈川県民ホールに子供たちと聴きに行った。その日の次女の日記には「ジョーンバエズの音楽会私はバエズさんが歌っているのを見ていたらどうしてか涙が浮かんできました。私はお母さんが言っていた戦争反対ということを歌にしたらぴったりです。私は英語もわからないのにそれが頭にうかんできました。ジョーンバエズの声はものすごくたかいきれいな声でした。」

その日のことは娘たち2人の忘れられない記憶になり、今回のボブ・デイランの映画も見に行きたいと言っています。

 

「名もなき者」は私の青春時代の1ページを紐解くようです。映画では政治的な発言も場面もあったがそれより詩的な表現がボブディランを取り巻く人たちから聞くことができた。ピートシーガー、彼の妻トシ、ボブデイランの最初のパートナー、シルビールッソ、バエズも、彼の周りに居た演奏家たちは日常的に詩的表現をしていたと感じた。彼らはそのように日々を大切に生きていたのかもと思う。デイランの作品のデイスコグラフィー目録の素晴らしさもあるが彼を取り巻く人々は彼を守り、本質の優しさ(kindness)が感じられた。それはデイランの繊細な神経を気遣う注意深さからなのかもしれない。

 

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2024/01/12

バベットの晩餐会

バベットの晩餐会

19世紀後半のデンマークの漁村にプロテスタントの牧師を父に持つ姉妹は出会った男たちとは結ばれず時が経つ。フランスパリコミューンの革命で父と息子を殺された調理人バベットは逃れてその姉妹のもとにどり着く。教会を中心に漁村の人々は信仰熱く暮らしていたが年を経て気短く怒りっぽくなる。バベットはくじに当たりその資金を使って牧師の記念日のために晩餐会を催す。隣人である村人たちは美味なフランス料理とワインを心から楽しみ、次第に敬虔な信仰心を取り戻していく。デンマークの漁村、プロテスタントの奉仕の精神、年老いていく中での気持ちの持ち方などがそれぞれの言葉で編まれていくのが心に沁みた。

一軍人から将軍となった年老いた男の言葉より

「慈悲や心と真心が今やひとつになった。正義と平和が接吻を交わすのだ。心弱く目先しか見えぬ我らはこの世で選択をせねばならぬと思い込み、それに伴う危険に震えおののく。我々は怖いのだ。けれどもそんな選択などどうでもよい やがて目の開く時が来て我々は理解する。神の栄光は偉大であると。我々は心穏やかにそれを待ち感謝の気持ちでうければよい神の栄光は等しく与えられる。そして見よ 我々が選んだことは全て叶えられる。拒んだものも捨てたものも取り戻せる。慈悲に心と真心がひとつになり正義と至福が接吻を交わすのだ」

映画の中で語られる言葉だが見てない人は漠然としていると思われるだろうが、映画を見れば理解できる。別れてからもずっと思い続けていた。これからも天に召されてもそうであると。

原作はデンマークの紙幣にも印刷されているカレン・ブリクセン

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2023/08/27

amazonプライムの映画を観て*1

久しぶりにブログに記事を書きます。最近amazonプライムで映画を見ることができることを知りました。Facebookでは全文を載せることができましたが、Twitterでは分離してしまい、うまく載せられません。そこで昔の古巣に戻ってブログに載せることにしました。何か新しい構造になってるみたいです。またよろしくお願いします。

 

今日観た「デイール美術商と名前を失くした肖像」は面白かった。フィンランド映画でフィン語が出てきて美術商という私たちには縁遠い世界なのだが絵に対しての見方が時々語られて、それでいて美術商のImg_9072 商魂もあり、徐々に惹きつけられた。

年老いた美術商ラウニョが周りの人たちに店をたたむ様に薦められているが最後を飾ってからと思っている。それはなぜかというと「金じゃない、名作に携われることがしたい」という。彼には娘と孫がいるが妻亡き後、美術商の仕事に夢中で付き合いはなおざりになっている。

孫は社会勉強をラウニョの仕事を手伝って成績として評価して欲しいと言ってくる。ラウニョはオークション会場で今までにない閃きを感じる絵に出会う。そこには名前のサインが入っていない。裏には「庭」の文字が。それを孫がおじいちゃんのためにネットで調べたり歩いて関係者を訪ねて、誰が描いたかを探りだす。オークションでは高額な額で競り落とすが、その後また大波乱!

絵の感想を孫にこう話す「モデルに媚びない潔さ」「腰の曲がった老人と手を繋ぐ幼子は命を歩んできたものと歩みゆくもの」

 

「聖画の前では画家も無、存在も無、誇示より謙遜。個人よりも全体」の言葉が残る。信仰心はこのような形で受け入れられたら素晴らしいと思う。

読んでくださってキートス!

 

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